
『みな殺しの霊歌』1968年
『みな殺しの霊歌』1968年 あらすじ
銀座クラブママが陵辱され、惨殺される事件が発生。
次いで鎌倉に大邸宅を構える大企業部長夫人も、同じ犯人によって無残にKILLED。
彼女たちの女ともだちは、妙にソワソワしています。
こりゃ大変だと捜査本部が設置されたところ、事件現場管轄派出所の巡査が「お耳に入れておきたいことが」とやってきて、クラブママのおうちがあるマンションから、事件の3日前に、近所のクリーニング屋のあんちゃんが飛び降り自殺をしてると言うのでした。
女たちと犯人、そしてあんちゃんの接点やいかに!?
【レビュー】【ネタバレあり】硬質なバイオレンスと切ないストーリー。傑作!
センセーショナルなストーリーの概要を了解した上での鑑賞だった訳ですが、ビックリ!
めちゃめちゃせつねー話じゃないですか!!😭😭😭
観終わったあとしばし呆然として、それから何度かシーンごとに観直してしまいました。
以下、ネタバレ全開で語ります
未見のかたご注意ください!!
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
観終わってからネタバレレビューをたーくさん読んできましたが、
「主人公があれだけの殺人をやらかすことの動機が弱すぎる」
って意見がめっちゃ多かったですけども、そんなこと言ってるやつはなーんも分かっちゃいないと言わざるを得ないですね。
というか、わたくしには、主人公と自殺少年の関係の薄さが、逆にめちゃめちゃよかった。
主人公、川島こと嶋は、新婚初夜に嫁はんに実は間男がいたことを知って、ぬっ殺して逃亡中の殺人犯だった訳です。んで、時効まであと1年で、都内の建設現場作業員として、ひっそりとやり過ごそうとしていた。
仕事場の下を、毎日口笛を吹いて通っていく少年がいて、にこっと笑顔で挨拶してくれる。で、メシおごったりして交流する中で、同郷ということが分かって、可愛がってたんだけど、実は名前すら知らない。そんな間柄でした。
が、例の事件が起こり、少年は、起こったことを嶋だけに話し、その翌日……
という流れです。
嶋は逃亡中の殺人者故にめっちゃ孤独。
孤独だからこそ、同郷の少年に対する思いが深く、しかも失ってからその深さに気付いたのではないかと思いました。
で、春ちゃんですよ。

嶋が通ってる食堂の、明るくかわゆい春ちゃん(倍賞千恵子)。
春ちゃんも実は、実兄を殺した過去がある。
この実兄ちゅーのが真性クズなんだけども、子どもの頃は仲の良い兄妹だったので、春ちゃんはほんとに苦渋の思いで殺してる。
みんなその事情を知ってるから、食堂のおじさんは署名集めて減刑の嘆願もしたし、みんな春ちゃんに同情してるし心配してる。
そして春ちゃんは、刑期を終えて社会復帰し、元気に働いている。
でも「人を殺めたことがある」って、超えられない壁で、春ちゃんはだからとても孤独。
春ちゃんも嶋も孤独で、春ちゃんはもう法的にも罪を償ってるけど、嶋はまだだし、更に後戻り出来ないほど罪を重ねてしまってるから、もうどうにもこうにも悲劇にしかならない訳です。
もうこれは、埋めようのない孤独を持つ人の物語であり、底辺で一生懸命何とか生きようとしている人の物語であり、でもそんな人たちが、無残におもちゃにされたり、孤独が怒りに変貌してやっぱり破滅するしかなかった物語だ、ってことでいいんではないかなと思います。
動機が薄いとか、んなこたどーでもいーんだYO!! 時代的にせりふがくさい部分もありますけど、わたしは観終わったとき、ずっしりと重いものと、せつなすぎる余韻が残りました。
なのでとても気に入りました。いい映画と思います。
それにしても、有閑マダムたちのドグサレっぷりも素晴らしい。
いっそすがすがしいほどでした!!
バーのママ、横浜のレストラン経営者のふたりは絵に描いたようなエロババアだし、大企業部長夫人はツンケン高慢ちきだし、菅井きん演じるデザイナーは、つくづくふてぶてしい上に、葬式ですら「それで??」と怒った感じがとてもよい。そして最後の被害者となる老舗布団屋の奥様は、上品な成りをしていながら「なんで殺されなきゃならないの! ここまでされるような悪いこと、あたししてません!」と、ほんと身勝手そのもので、ええのーーーええ感じのドグサレ女やん!と拍手喝采でした!!
惜しむらくは、クリーニング屋の少年が、もっと美少年だと更にぐっときたことだろう、と思ったところでした(笑)
まぁこんな感想を持つわたくしの方がドグサレなので、この点はいいと致しましょう!(笑)
冒頭の殺人シーンの鮮烈さもよかったー!!
あとずーっとローアングルなのもよかった。
部長夫人が殺される前、脅されてると思ってせわしなくタバコを吸いながら、呼吸が荒くなっていく様子を、巨乳を下から映して表現するの、ええのおええのおと思いました!!
めちゃめちゃ好きな映画に出会えてしあわせな1日でした( ^ω^ )
コメント